内視鏡(腹腔鏡)による手術

当院が開院した20年ほど前は、人では当然腹腔鏡を使用した外科手術がされていました。動物ではお腹を開けて手術した方が確実で安全、かつ動物は社会復帰までの時間の短縮など必要ないといわれ、開腹手術が当たり前の時代でした。

その後2008年ごろ海外の外科専門医のセミナーを受けたところ、ヨーロッパの大学病院では腹腔鏡を取り入れた手術が行われはじめ、費用が高めでも多くのオーナーは動物への負担が少ない腹腔鏡下の手術を希望するという話を聞きました。当時はまだ最先端の話だと思って聞き流していました。

2014年に渡米し友人の動物病院に見学に行った際、すでに腹腔鏡を導入し避妊手術をしているという話を聞き、実際に腹腔鏡の道具や手術を初めてみました。

2018年にアメリカのコロラド大学の外科の専門医が来日し腹腔鏡のセミナーが実施された際には、自ら参加し多くのことを学びこの年の内に当院でも腹腔鏡を導入いたしました。

実際に腹腔鏡を用いた手術を行うと、術中~術後の痛みが少ないことが判り、術後の回復も速やかなことを実感しております。
午後2時半ころに避妊手術を終了した犬が、同日の午後6時頃にはオーナーの元へ尻尾を振りながら駆け寄っていくこともあります。
いくつもの腹腔鏡下での手術を経験し感じたこととしては、直径5mmほどの穴を2~3か所で避妊手術を行うことが出来るため、動物への痛みや負担が減り慣れるまでは手技の難しさはあるものの、慣れてしまえば手術中臓器を必要以上に触ったり引っ張ったりすることはなくなり、それにより痛みは少なく、当たり前ですがカメラの真ん前で手術を行うためより安全に確実に止血を確認できます。

腹腔鏡導入から3年、現在では当院で避妊手術を希望される飼い主様の90%以上が腹腔鏡下での手術を希望されます。他にも停留睾丸の手術でも腹腔鏡は低侵襲で有効です。更には膀胱結石の摘出も非常に低侵襲で行うことが出来ますし、肝臓などの生検も低侵襲で行うことが可能です。

腹腔鏡の手術の経験が乏しい獣医師は、腹腔鏡下の手術を理解していない場合がほとんどです。私自身腹腔鏡の手術を手掛けるまでは、動物に対しては開腹手術の方が確実で安全だと思っていました。しかし腹腔鏡下での手術を始めて経験を重ねてからは、すべての手術に対してではありませんが動物への負担を考慮すると、避妊や停留睾丸摘出、膀胱結石摘出などに対しては、腹腔鏡下での手術がより適していると考えております。

当院では全ての獣医師が内視鏡(腹腔鏡)下の手術のご説明を丁寧にすることが可能です。
ぜひ痛みや侵襲の少ない内視鏡(腹腔鏡)下での手術のご相談をしにいらしてください。

医療機器

電気メス(Ligasure)

リガシュア(血管シーリング機)

ソニックビート(超音波メス)

ソニックビート(超音波メス)

腹腔鏡システム

腹腔鏡システム

腹腔鏡による避妊手術

腹腔鏡下卵巣摘出術(避妊手術)は、腹腔鏡により術部を観察しながら特殊な鉗子と血管シーリング機を用い卵巣を摘出する手術です。腹腔鏡下卵巣摘出術(避妊手術)はお腹を開かず滅菌したCO2ガスをお腹に入れ手術を行うので、お腹の中の臓器が空気や術者の手に触れず手術可能なので感染の心配もほとんどありません。
また血管を糸で結ばずシーリングすることで止めるので、痛みや炎症も少なく行うことが出来ます。それゆえ痛みも少なく術後の回復も速やかです。以下に手術の手順を記します。

1)5mmの穴を3か所開けてトロッカーという筒状の器具をお腹に3か所入れ滅菌CO2ガスを入れお腹を膨らませます。

2)このトロッカーを経由し、①カメラ(腹腔鏡)②鉗子③血管シーリング機(リガシュア)を挿入します。
カメラ(腹腔鏡)にて映し出した画像をモニターで見ながら左右の卵巣を摘出します。

3)最後にトロッカーを抜き滅菌CO2を除去後お腹に空いた穴を縫合し閉じ皮膚を縫います。
手術時間は開腹手術とほぼ同じか若干長い程度です。

手術をしてから、一週間後のお写真です。

*当院では以下の理由により基本的に卵巣摘出術を行っております。

  • 1)卵巣のみ摘出でも子宮卵巣全摘出でも避妊の効果は変わらない。
  • 2)子宮卵巣全摘出術の方が手術が煩雑になり手術時間も増し危険度が増す。
  • 注)子宮蓄膿症など子宮に問題がある場合は子宮卵巣全摘出術を行います。

手術後の写真

術後

腹腔鏡下避妊手術(犬)

術後

開腹による避妊手術(同犬種)

術後

腹腔鏡下避妊手術(猫)

術後

開腹による避妊手術(猫)

腹腔鏡下精巣摘出術(停留睾丸)

停留睾丸は時々見られる先天性の異常です。
通常睾丸は生後には陰嚢内に収まり皮下や腹腔内(お腹の中)にはとどまりません。
皮下や腹腔内にとどまってしまった睾丸を停留睾丸と呼びます。

皮下の停留睾丸は皮膚切開のみで切除できますが、腹腔内にとどまってしまった睾丸は開腹手術が基本でした。
腹腔鏡を用いた手術では、お腹に2個の直径5mmほどの穴をあけることで停留睾丸を切除することが出来ます。通常の開腹手術に比べ非常に痛みや負担が少なく行えます。

停留睾丸でお困りの飼い主様はぜひご相談ください。

腹腔鏡アシスト下膀胱結石摘出術

膀胱結石が出来てしまった場合、一部の膀胱結石は外科的に摘出する必要があります。

膀胱結石摘出術は従来は開腹手術にて行われてきました。
腹腔鏡導入以前は当院でも開腹手術にて膀胱結石を摘出していましたが、現在は腹腔鏡を用い5mmの穴と膀胱結石の大きさに応じた穴を開けて摘出しております。

腹腔鏡アシスト下の膀胱結石摘出術は開腹手術と比べ非常に負担少なく行うことが可能ですので、少しでも犬や猫の負担を少なく膀胱結石摘出術をご希望の飼い主様はぜひご相談ください。